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織り込み済みという相場解説に便利な言葉|証券界での使い方と現実

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相場解説を聞いていると、時々耳にする「織り込み済み」という言葉。

証券営業マンもよく使う言葉なのですが、すごく都合の良い言葉のようにも思います。

 

今回は本来の意味とウソに近い使い方についてご説明します。

 

織り込み済みとは

株式式市場など、金融市場は半年先を織り込みながら値段を付けていると言われています。

つまり、色々な国際ニュースを含む全ての材料を勘案して、先々の予想をもとに取引が行われているということです。

と言うことは、悪い材料が出て、これから景気の悪くなっていくことが予想されれば、その段階から投資家は資金を引き揚げていき、実際の経済指標が悪くなくても、その兆候が出た時点から、その投資先の投資パフォーマンスは下がっていくことがあります。

 

誰でも我先に逃げようとしますし、我先に儲けようとしますので、当たり前のことですね。

こういったことが繰り返される結果、株価などの値段を付けるものすべては、足元の材料で揺れ動くことになります。

その中には、短期的な要因として捉えられるものもあれば、明らかに長期的に影響していくものなど、その材料ごとに変わってきます。

 

では、実際に景気が悪くなるだろう材料が出てそれが数字となって現れた場合、どうなるでしょうか。

 

その答えは、「どうなるかは市場が最終的に決める」ということです。

 

少し抽象的な表現になりましたが、ここに今回テーマの「織り込み済み」の使い方が色々あることの原因が存在します。

 

織り込み済みの正しい使い方

「織り込み済み」の正しい使い方として代表的に挙げられるのは、企業の決算発表です。

例えば、ある企業の主力商品に欠陥が出たとのニュースが出たとします。

その時、株価はその材料を手掛かりに売りが加速することが一般的な動きとして想定されます。

 

しかし、この時には、企業の業績にどこまで影響を与えていくかは、あくまで予想であり、こうなるだろうという見通しの中で、投資家は株のやりとりを行うわけです。

大きな材料がでた瞬間は、思惑が市場で交錯するので、株価は乱高下することが多いのですが、やがて落ち着いた動きへと変化し、結果的にその材料を織り込むことになります。

 

そうして、その企業は、やがて決算を迎えることになりますが、悪い決算であることが既に市場の予想として一致しておりますので、決算発表が悪くても、その数字は予想されていたことから、悪材料の出尽くしとして、株価は上昇することになることがあります。

これは、「織り込み済み」との表現が正しい使い方の代表例です。

 

都合の良い使い方

上で挙げた例は、分かり易い例ですが、投資の世界にはどう考えるべきか悩むケースが非常に多くあります。

例えば、ある企業の売り上げは上がっているけど、利益が伸びていないとか、爆発的に売り上げた商品があって利益はでているが、後発商品の開発力が低いと思われる企業の好決算発表などは、どのように考えていけば良いか迷うことがあると思います。

 

それが、市場に取って、どのように捉えられるかはその時の市場の雰囲気や、勢い、その株価への期待感などで、同じ数字が出たとしても、素直に良い内容の数字に反応することもあれば、その先の見通しがクローズアップされて、株価は下落してしまうケースもあるのです。

 

その時に、相場解説者は、「織り込み済みでした」と語ることが多くありす。

実際の株価が好決算に反応していないわけですから、結果をみて「織り込み済みだった」というのは、素人でも言葉さえ知っていれば誰でも使って説明できます。

 

現実的な使い方として、ある銘柄の推奨をしていたアナリストなどが、「最近こんなサービスをして売り上げが上がっているから次の決算で最高益を出すことが予想できます。」としたうえで、「よって、この銘柄の組み入れを推奨します」」としたとすれば、このアナリストの主張はその銘柄の上昇を予想していることになります。

その根拠が「あるサービスの売上が上がっていること」です。

 

でも、今の世の中、そこら辺の事情はアナリストでなくてもわかることですし、売り上げが上がっているサービスの認知度は日増しに上がってくるのですから、それを運営する会社の株は、決算前に人気になりますし、どんどん上がっていくのかは、それ以上の良い見通しがはっきりしないと、決算という結果を見てさらに買い付けを検討する投資家が多くなるかは、また別の話になるケースがあります。

 

それが悪い方向で現れた場合は、アナリストとしての主張は、「買われていく」との理由で推奨していたはずなのに、「今回の決算は良い決算でしたが織り込み済みでした」と報告します。

 

投資家としては、投資に優位な情報提供を望んでいるのですから、織り込み済みの情報なんていりません。

むしろ騙されたと感じる投資家がでてくるでしょう。

 

さらに、よく使われるのが大きな経済指標の見通しを語っていた場合です。

大きな経済指標、たとえば金利政策の会議の結果や雇用統計などは、莫大な資金を動かす機関投資家も様々な行動を取りますし、市場参加者が多いので、数字の良し悪しでは動きが読めないことが多く発生します。

 

しかし、証券営業の世界では、その瞬間の商いを成立させるために、こういった読みにくい材料に対し、見通しを示したうえで、買い付けや売り付けの提案を行うことが非常に多く存在します。

 

例えば、「今夜のアメリカの雇用統計は良い数字がでそうなので、日本の代表銘柄の〇〇を買いましょう!」という具合です。

 

そして、いざ発表を迎えると、まず予想が外れることがあるわけです。

数字は発表されるまで、証券会社の調査力でもわかりません。

外れることもありますから、それが原因で損をする可能性は低くないといえます。

あくまで調べてきた内容から予想をしているに過ぎません。

 

さらに、良い数字が出たとしても、様々な投資家の思惑が交錯した結果、日本株式市場に取って悪い動きをすることもあります。

その時の定番のいいわけが「織り込み済みでした」というキーワードです。

 

これの怖い点は、株価の上昇を予想していたのに、結果は下落したことに対し、自分の情報は間違っていなかったかのような発言をしていることです。

 

間違った使い方のタチの悪い点がここです。

投資家に取って、利益になる投資が全てです。

それなのに、下落した時点で「織り込み済み」も何もないのですが、根拠が間違っていなかったと主張するかのような言い方は、やはりよくない表現と言えるでしょう。

 

結果としては、このようなギャンブル的な投資は、

①予想が外れる→損失

②市場の判断が悪い方向へ→損失

③素直に数字に反応→利益

という結果の中で、確率の低い投資方法であると言えるでしょう。

 

実際の経験でもやはり損させることが多かった取引例ですが、支店などでは「今日の雇用統計は必ずいい数字がでるんだから、各課日本株を3000万積んでおけよ。明日支店全体でその玉を使って手数料を稼ぐぞ!」と指示が出るわけです。

 

利益が出ると顧客は機嫌よく次の提案を聞いてくれるので、もし支店の方針が当たれば、次の日の収益は安泰となります。

外れた場合は、その発言がなかったかのように、他の収益を上げる方法で結局求められる手数料は変わらないからいつもビックリです。

顧客には「織り込み済みでした」と言っておき、過度に信頼を失わないように配慮しながら、また提案を行っていくことになります。

 

 

まとめとしては、この「織り込み済み」という言葉は、大変都合の良い使い方をすることが、業界内で常識になっていることを理解してくださいということになります。

 

特に予想している人の一番の言い訳になる言葉ですので、経済評論家がこれを使う際は、使う前になんて言っていたかによって、投資家はその評論家へジャッジを下していくことが大切です。

 

「今回は織り込み済みでした。

でもいい数字が出たのは間違いないので、今後は持ち直すでしょう」。

と言っていたら、信じてしまう投資家も現れますが、色々探していくと、既に織り込まれていることを予想していた評論家の存在に気付きます。

 

信じるべきはこちらの評論家の方だということは説明しなくてもご理解頂けるところでしょう。

 

投資に関する情報は、市場の反応ありきで考えなくては意味がありません。

投資家は経済の勉強をしているわけではなくて、利益を上げるために知識を得ているのですから当たり前ですね。

 

そういった点に是非注意して「織り込み済み」との発言とは付き合っていきましょう。

 

なお、繰り返しになりますが、「織り込み済み」との発言は、悪い言葉というわけではありません。

あくまで買い推奨がはずれたとか、日経平均等の上昇を唱えていた人が根拠にしていた情報に対し、使う場合を指すので、言葉自体に悪い印象を持つことは避けて下さい。

 

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