元証券営業マンの本音で語りたいこと

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金商法と金販法が証券営業に与えた影響|なぜ今金融業は録音を取っているのか

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少し時間が経っている話題ではありますが、今の証券界を説明していくのに必要なテーマなので、今回で取り上げてみることにしました。

 

2006年に証券界に激震が走りました。

以前とは、違った営業が必要になったと言っても良いくらい、かなり強い揺れが襲ったと記憶しています。

 

2006年、それまで証券取引法と呼ばれていた証券界の大本の法律は、金融商品取引法へと名前を変え、金融商品販売法も改正されました。

 

法律的な話は、このブログの範疇を越えるので、ここではどのような影響を与えたのかを中軸にして書いていきたいと思います。

 

この法律が施行された背景は、複雑になった金融商品を一括した法整備の中で取り扱っていくことが国際的な動きになってきたことと、その金融商品の複雑化によって販売・勧誘に対するトラブルが増加していたことがありました。

 

さらに、「貯蓄から投資へ」という政府の政策を推し進めていくためにも、この改革自体は、投資家保護が主な狙いとなっている法整備でした。

 

 

証券会社と販売・勧誘のことで訴訟になったら、立証責任はどっち?

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この答えわかりますか?

2006年までは、この答えが完全に「顧客」でした。

証券会社とトラブルになって訴訟になれば、そのトラブルの原因が証券会社の勧誘や販売の方法にあったことを、顧客が立証しないといけなかったのです。

 

その結果裁判は長期化する傾向が顕著で、裁判費用の増加や立証の難しさから、小さなトラブルの場合は、解決する手段が実質的になく、余程の案件でない限り顧客の勝訴を勝ち取るまでの道は長く険しいものとなっていました。

 

しかし、過去形で記した通り、今はこの関係がほぼ逆転しています。

 

この法律の整備以降、顧客との販売におけるトラブルで訴訟を起こされた場合、証券会社は、説明義務とそれを犯した場合の賠償責任を負うことが明確化されたため、説明義務を果たしていることを立証しないといけなくなったということです。

よって、上で挙げた質問の答えはどちらかと言うと「証券会社」が正解です。

顧客側の主張は、騙されたということになるでしょうからね。

 

この改正が一番、業界に衝撃を与えました。

細かく覚えていなくて申し訳ないですが、この法整備に纏わる研修は施行前後全て合わせると、数十時間に及んだと思います。

 

いくつかその理由があるのでまとめ切れるか目途が立ちませんが続けていきます。

 

変わったところ

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  1. 販売が適切に行われたことを全て記録(データ)で残すことに
  2. 顧客の投資目的(口座開設時に〇をするアンケートみたいなもの)に即したもの以外は勧誘不可に
  3. 〇〇締結前交付説明書をカテゴリー毎に説明し、渡さなければならなくなった

大きく分けて、営業というセクターで考えるとこの3つかと思います。

 

まず、販売に対するデータを全て残すことになりました。

サブタイトルで挙げた部分ですが、なぜ今金融機関は録音をしているかというと、今回のテーマにしている2つの法整備の結果と言えます。

そのほかにも、顧客との接触は、全てデータで概要を残し、目論見書の交付・説明をしたことなどの重要なことは全て打ち込みをしないといけなくなりました。

 

投資信託を例に注文の取り方を説明しますと、最終の注文を取る電話では、大事なことを網羅する形で説明を行います。

元本欠損の可能性はもちろん、手数料や内在するリスク等、主に顧客が買うことをためらう内容を繰り返し説明した後で、注文を確認するわけです。

 

これは、正直ものすごい嫌な作業でした。

販売については、しっかり説明していたという自負は持っていた私ですが、いざ買う直前で数分以上リスクや手数料の話をしてから注文を頂くのですから、途中で顧客から何が出てくるかヒヤヒヤしながら話すわけです。

顧客だって一度聞いたリスク説明を買う直前になって聞くのですから気分が良いはずもありません。

 

さらに、もしその電話で「ぜんぜんわからないけど、買って」とか、「あなたが儲かるって言うから買うんだ」、「損はさせないでね」なんて言われたら、注文はもらえません。

法律違反ですからね。

この教育(電話でそういうことを言わないように)をするのも骨がおれました。

 

しかし、もっと困っていたのは、ベテラン営業マン。

昔、株屋と言われていた時代を地でいくような人は、リスク説明が非常に曖昧でした。

この録音制度は、営業の管理をする部門で再度録音を確認して、適切な販売が行われるかをチェックされ、注文が入力できるように処理をしてもらうのですが、何度もこれではダメだと言われてやり直していたことを思いだします。

 

逆に考えれば、それだけ投資家保護に繋がった法整備であったと言えますね。

 

次に、投資目的の整備です。

これは、口座開設をするときにアンケート形式で載っているもので、安全性を重視するとか、収益性やバランスをとりたいとか、口座を開設した人はみんなどれかに〇をしないといけないものなんですが、扱いがそれまでそんなに重視されていなかったんですね。

 

しかし、こんなアンケートみたいなものが法整備で最重要視するポイントにかわります。

例えば、安全性を重視したいなんて言っている人は証券会社に口座開設する場合でもかなり多いんです。

誰だって、利益を得るために散り引きするわけですので、安全に増やしてねと言うわけです。

 

しかし、安全性を重視すると〇をつけた人には、あらゆるリスク商品の販売ができなくなりました。

 

ただ、そのアンケート結果みたいな投資目的ってものは、変更が可能です。

人には、心変わりがありますから。

 

結局、法整備によって、今度は証券会社が顧客整備に走ることになりました。

一件づつ、この投資目的の変更をしない限り、リスク商品は買えないことを説明していきます。

 

この作業と、3つ目に挙げた書類整備を同時進行していくことになるので、本当に大変な作業となりましたね。

 

整備しないといけない顧客リストをみて、なかなか消えていかない進捗具合と、やらなければならない手数料で、てんわやんわでした。

 

少し触れましたが、締結前交付書面は、一つ一つの商品群のトリセツみたいなもので、前提となるものですので、個別商品云々の前に説明して理解してもらう必要があるものです。

 

 

最終的な考察

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私は、法律改正前の経験が浅く、昔の営業を知りませんが、この法整備で証券界に背筋が通ったことは間違いないことだと思っています。

 

上でも述べましたが、顧客保護に対して一定の効果はありました。

 

しかし、それと同時に顧客の自己責任の曖昧さは際立ったように思います。

特に、ベテラン営業マンの顧客には驚くばかりでしたね。

 

時代が変わっても、人がそれに敏感に反応するのかは別の話で、法律整備と言うのは、運用していくことによって実際の影響力を高めていって、ひいては社会のルールになっていきます。

 

実は電話の録音には裏があります。

 

それは携帯を使って、顧客と打ち合わせをすること。

管理責任者のチェックは、顧客と打ち合わせしないと越えられないくらい高いハードルだったため、至るところでそういう電話を目撃しました。

 

やはり、ブラックな証券界がそんなに簡単には変わらない証左ですね。

 

しかしそれでも電話で再度細かくリスク説明することにはなったわけで、営業マンがしていた打ち合わせは、そのリスク説明でショックを受けないように、もう一度その魅力を語ったり、説明するリスクの裏側になるメリットを語ったりと、円滑に電話で注文受注をするためだったりしました。

 

もちろん、ブラックな営業マンがいたことは否定できない事実ではありますが…。

 

顧客の方もちゃんと説明すれば、自己責任の基に投資をしていることは理解してくれます。

営業マンが補てんなどしないことは誰でも分かっているのですから、本当の心の中は、「それでも信じているからね」というような意味合いで、曖昧な言い方をするところがあります。

だからこそ、最後にそれを突きつけることは残酷な気もしていました。

 

 

よって、結論としてはリスク説明義務が以前よりも劇的に強化されて、証券界もそれに対応している時代なわけですから、やはり真の意味で利用者は理解して行動を選択しないといけないということですね。

 

かかる手数料にも敏感にならないといけませんし、語られたリスクが顕在化した状態をイメージして理解しないといけません。

 

最終的には、自分で勉強しないといけないことに気付いてほしいなと思う次第です。

 

 

まとまり切った感覚はありませんが、今回はここまでとしましょう。

外の方にどこまで説明したら良いのかよくわからなくて、読者の方に混乱させることになった内容もあったかもしれません。

 

専門的な解説書はなかなか書けなくて申し訳ないです。

ここではイメージをより具体的にしてもらえたらと思います。

 

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