毎月分配型投資信託の分配金利回りの正しい考え方と計算方法
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毎月分配型投資信託の人気は衰え知らずな面もありますが、実際に利益をだしている投資家はあまり多くないとの話があります。
毎月分配金をもらっているから利益だと思っていたけど、元本が減ってしまっていたことで、損をしたという感覚が大きくなるということも影響していそうです。
私がまだ証券会社にいた時も、そのような顧客が多くいました。
しかし、本当に毎月分配型投資信託そのものが悪いかと言えば、損をする理由は他の要因が絡んでくる問題です。
それを理解するために、正しい毎月分配型の分配金利回りの考え方と、計算式を覚えましょう。
分配金の利回り計算式
先に分配金利回りの計算式を説明します。
分配金利回り=
毎月の1万口当たりの分配金×12(1年分)÷買い付け単価×100
買い付け単価=
買い付け基準価額×買い付け手数料
税引き後を計算したい場合は、1年分の分配金に0.79685をかけて計算をすれば出ます(税率20.315%)。
この計算式をみれば明らかですが、投資信託の利回りとは、買った値段がそれぞれ違うので、その投資家ごとに利回りも変わってくるという特徴があります。
もし大凡の利回りを基に提案を受けるようなことがあれば、それは目安だと捉えましょう。
大きくそこから変動することは稀ですが、買い付けの値段が決まるまで利回りは決まりませんし、買い付け後に分配金の引き上げ引き下げはあり得ることですので、注意が必要です。
毎月の分配金利回りって本当に大事なの?
毎月分配型の分配金の源泉は何だと思いますか?
これは、運用益ということになります。
しかし、その運用益とは、計算が可能なのでしょうか。
毎月分配型の多くは、毎月決まった額が出ていますね。
運用益は毎月一定になることはありませんから、何だか不思議に思います。
その考え方を常識的に考えれば、毎月分配型投資信託において、大きな間違いをすることは無いのですが、多くの初心者投資家の方は、表面的な分配金利回りを重視し過ぎます。
これは、販売の姿勢にも原因があると思います、
日本人の投資意欲を最も掻き立てたのが、毎月分配型投信を世に広めたグローバルソブリンでした。
詳しくはこちらで書いているので(初心者個人投資家に毎月分配型投資信託はなぜ人気になったの? )、もし興味があれば読んで欲しいのですが、ざっくり言ってしまうと、貯金の利子をもらう感覚と、毎月分配型投資信託の分配金をもらうことがマッチしたわけです。
当たり前ですが、利子は高い方が人気になります。
それをそのまま当てはめて、毎月分配型の投資信託は分配金利回りを引き揚げてきました。
「100万円の投資で毎月〇〇円貰えます」
私も恥ずかしい話ですが、こんな営業を数えられないほど繰り返しました。
それが一番分かり易く魅力を伝える方法として、業界では確立された考えになっていたからです。
結果、多くの投資家に毎月分配金がもらえる投資信託は、利回りが良く、安定した成果を生めると人気になります。
しかし、それはあくまで円安になっていたことが影響しているのであって、毎月分配金の基礎をなしていた、組み入れ銘柄の利子収入は、そこまで増えてはいませんでした。
組み入れ銘柄の利子収入とは、その投資信託が運用するために保有している債券の利子のことです。
外国は日本に比べて金利が高い国が多いので、この利子収入が多くの毎月分配型の運用益の根幹を支えています。
これがある程度計算可能な運用益となりますので、毎月分配金が安定して出ることの説明によく使われます。
しかし、過熱する分配金利回り競争によって、現実的に厳しくても高い分配金を支払うことが業界の常識になっていきました。
集める資金を増やすには、その分配金利回り競争にある程度勝てないといけませんでしたし、無理をしていることを批判する向きはあっても、投資家の投資行動は、もっと単純に働いていたというのが私の見解です。
良くわからずに、目に見えるモノが全てだっと言っても過言ではないのでしょう。
リンク記事でも書いていますが、リスクを度外視して、安定神話のように保有・買い増しをする投資家が溢れかえっていました。
それもリーマンショックで、少しは淘汰され、今は知識を付けようとする投資家の割合は増えたと感じますが、それでもまだまだ足らないことは投資信託の人気ランキングを見ると明らかです。
まず、正しい分配金利回りに対する考え方を持つのに必要なことは、分配金は利子とは違うことを自覚することであり、元本の変動で全て吹き飛んで損失に転じることがある物だという認識を持つことがスタートです。
営業マンの販売促進によって、あたかも分配金を多くもらえることは正義となってきましたが、根本的に間違った考え方であることを認識するべきだと思います。
おかしいと気付くきっかけ
分配金利回りを重視するべきではないと気付く簡単なきっかけがあります。
それは基準価額を調べることです。
基準価額は、投資信託を新規で設定する時、1万口当たり1万円でスタートします。
それが運用の成果によって上下していくのですが、リーマンショックの影響から、1万円を大きく割り込んで推移している投資信託が数多くあります。
そのいくつかの中から毎月分配型の投資信託を見てみると、1万円を割り込んでいるのに、高い分配金を支払っているものが驚くほど多いことに気付きます。
おかしいと思いませんか?
投資信託には必ずと言っていいくらい長期で設定来から保有を続ける投資家がいます。
それなのに、元本を割り込みながら高い分配金を支払っているわけですから、これはタコ足配当を受けているとその方たちが思っても致し方の無いことですね。
さらに、直近の運用パフォーマンスが良いとの理由で、元本割れしている投資信託の分配金を引き上げるところすら数多く存在しているのです。
いかに分配金利回りに拘るのがおかしいかを最も表した部分でしょう。
本来は誰も元本を切り崩しているような分配金の受け取り方をしたいはずがありませんが、保有を続けて欲しいがために、また、買い増しや新規の顧客獲得のために、分配金利回りに特化した運用スタイルが取られることが多くなってしまっています。
少し調べてみるだけで、印象が違って見えてくると思います。
毎月分配型の投資信託は買ってはいけないの?
いいえ。そうではありません。
私の伝えたいことは、表面的な分配金利回りに惑わされないでくださいということです。
投資信託選びで重要なことは、その中身です。
また、その商品を取り巻く環境や今後の見通しで、投資をするべきかどうかを考えなくてはいけません。
確かに表面に表れているものは、非常にダイレクトにその魅力を訴えてきますが、分配金はあくまで運用益から支払われるものであって、利子とは根本的に違うものです。
投資信託の中で保有している債券の利子を当て込むのは、債券をベースにした投資の基礎と言えますが、為替の変動によるリスクはその利子収入をはるかに超えて利益や損失を生む可能性があります。
債券型の投資信託を持つ場合は、そのことを念頭に置いて投資を検討するべきですし、分配金はそのおまけとして考え、投資スタイルの一つの方法だと捉えましょう。
その考えで検討をして、魅力を感じる商品を探すなら、毎月分配型の投資信託が悪いものだとは思わないはずです。
あくまで良いものと悪いものがあって、それは分配金の源である運用成果が大事だということに考えは辿りつくでしょう。
確かに、税金や運用面で毎月分配型の投資信託は不利だとする考えがあって、それは正しいことを論拠にしていると思っていますが、投資を考える際は、成果をどのように還元していくかという問題もあって、その部分で、有利な点もあるカテゴリーです。
簡単に言ってしまえば、利益確定の方法や受け取りながら運用していくことで長期保有を可能にするというメリットが毎月分配型の投資信託にはあります。
よって優秀なファンド探しは、中身ありきで考え、リスクとリターンのバランスを考えて投資を行いましょう。
良いものを持てば、運用成果が出ることでトータルの損益は向上していくはずです。
分配金は、そのファンドの一つの側面を映しているに過ぎないことをご理解頂ければと思います。
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