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証券会社は回転売買がひどいの?|社内ルールという規制による効果のほどは

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証券会社のイメージで一番最初にくる言葉の一つに「回転売買」があります。

手数料収入が収益の大きな柱になっている証券会社は、限られた個客の資産から手数料をもらうために、顧客の資産を右から左へ移して手数料を稼ぐという収益構造を作ってきたことは確かな事でしょう。

 

時折大きな問題として取り上げられる「回転売買」ですが、実体を知っている人は少ないのではないかと思い、今回取り上げてみることにしました。

 

一度イメージを捨てて読んでもらえたらと思います。

 

回転売買とは

回転売買とは、顧客の資産を頻繁に売買して保有商品を次々と変えていく売買のことを言います。

乗り換えを繰り返した結果、それがあまりにも多い時に、結局最初の商品に戻ることがあり、回転していると見えることからも売買が多くなることを、回転売買と言ってきました。

 

一般的に投資と言うのはコストを抑えて運用する必要があり、売買を頻繁に行うと手数料が増加することから、投資家に取ってデメリットが大きく、証券会社にメリットが大きいものと考えられてきました。

 

確かに証券会社が、手数料を上げようと考えた場合、新しく資金を入れてもらうより、現口座内にある物を動かした方が顧客の負担が減って、売買に納得してもらえることから回転売買は実質的に今も存在します。

 

どこから回転売買に当たるのかは正直微妙な判断になると思っていますが、必要性の有無という観点が一番大事な要素だと考えます。

 

つまり、必要性のある売買が回転売買になってしまうこともありますし、全く意味のない売買の繰り返しが回転売買になるという二つのパターンが存在しているだろうということです。

 

それを語っていくのには社内ルールがどのように回転売買に影響を与えるかを知ってもらう必要があります。

 

社内ルール

証券会社は、それぞれ社内ルールを策定して当局や日本証券業協会等にチェックを受けています。

所謂自主規制をすることで、当局が干渉する前に自浄していこうということです。

また、協会も社内ルールをしっかり策定してそれを守るように仕組み作りをしていくことを求めています。

 

また、当局や協会から色々な考え方について発信があったり、検査で発覚したことで他社が指摘を受けたこと等は公表されるので、社内ルールを強化することで対応を考えたりすることも多いです。

 

過去記事でも述べたように、特に法律の改正によって投資家保護が強化されましたので、業界内は大きく変わっているのが現状である、と表現できるような環境はできてきています。

 

回転売買が証券会社の悪しき風習であるとの見方は、世間で一般化していることもあり、近年この回転売買による手数料稼ぎが行われないようにする業界全体の流れは、かなり加速している状況です。

 

しかし、それが一般の感覚と一致しているかは疑問が残り、どこまで努力をすれば問題が無いのかの議論は残る状況とも言わざるを得ません。

 

適切な売買頻度については、扱う商品によっても変わってくる問題であり、相場環境によっても意見の分かれるところです。

 

ルール作りの難しさは、収益をあげないといけない証券会社に取って、非常にナーバスな問題となっています。

 

回転売買の社内ルール例

投資信託で例を挙げてイメージを持ってもらいましょう。

 

例えば、アメリカの債券に投資をする投資信託を持っていたとします。

初めての投資信託買い付けだったので、世界一の金融市場をもつアメリカで投資をしたという設定で考えます。

 

その後、その投資家は勉強して分散したいというニーズを持つます。

そこで営業マンは新規資金導入のチャンスと、色々な商品提案を行います。

 

しかし、新しい資金を入れるまでの投資意欲はなかった。

そこで乗り換えを提案してニーズに合った商品を持ってもらうことを考えます。

 

その後、顧客と話をしたところ、顧客はアメリカへの投資はある程度続けたいと反応します。

 

この時の行動は二つ考えられます。

一つは一部を売却して乗り換える。

もう一つは、投資信託内で分散されている先進国世界債券型ファンドへ乗り換える。

 

どちらも、このパターンの顧客なら応じるように話はできるでしょう。

 

しかし、先程挙げた社内ルールがそれを阻止します。

 

一部売却による乗り換え提案は、顧客がなぜ全てを売却しなかったのかが問題になります。

営業マン主導で説得したから、断り切れずに一部だけ応じたのだろうとの懸念です。

 

「乗り換えをするなら、一部を残す意味を明確にして上司による説明を受け、それでも顧客が望む場合は可とする」

といったような社内ルールが組まれることが多いので、書類の作成や顧客の明確な意思など、面倒が増えたり難易度が上がったした分、その顧客の乗り換えを諦めるということも増えることで、回転売買を抑える効果が期待できます。

 

次に先進国世界分散型ファンドへの乗り換えパターンです。

世界分散がされているとは言え、同じ先進国の外国債券というカテゴリーで乗り換える意味が果たしてあるのかどうかが問題になります。

 

この場合も上と同じように書類と確認を強化するか、意味のない乗り換えとして禁止している証券会社もあります。

 

先進国世界分散型ファンドの内訳にアメリカも入っていることがほとんどで、ヨーロッパ等と分けることで値動きが変わる可能性は小さくありませんが、利回りが上がらないことなどが理由で、商品毎に乗り換え可能商品をカテゴリー毎くらいのイメージで決めているところがあります。

 

つまり、誰の目から見てもおかしいと思う売買をなくして、意味のない売買によって顧客から手数料をもらうことを規制し始めているということです。

 

これは、法改正から証券マンが肌で感じる部分であり、一方でその前の状況を懸念される方はおられるかもしれませんが、現状は改善に向かいつつあるということは望ましいことと言えるでしょう。

 

私がなぜこれを例に出したかと言うと、この例に挙げた考え方は私がいた証券会社が独自に策定したものも含まれるのですが、根本には当局や証券業協会の考えがあったからです。

 

要は、各社に同じ考えで乗り換えの規制を強化するように指示があったわけですね。

 

投資家保護の動きはこんなところにも実は動きがあったのです。

 

また、乗り換えに対し売却銘柄の保有期間についても規制をしているところが多くあります。

短い時間しか保有をしなかった意味が分からないことと、投資信託自体は長期保有が原則なので、半年未満の保有商品について乗り換えの提案をしてはならないといったようなルールを作ります。

 

そういった規制をすることで、勧誘時に長期保有を勧めることも期待されています。

そうでなければ、「少し利益が乗ったらもっといい商品に変えましょうね」などと言う勧誘の仕方で、後の乗り換えをし易くなる提案に走ってしまう営業マンがいるということですね。

 

回転売買はなくなるの?

回転売買を無くすことには一つの問題があります。

それは、回転売買になってしまうかもしれないが、乗り換え提案が必要なときもあるということです。

 

例えば、ある投資信託を買い付けた直後にものすごく悪いニュースがでて見通しが完全に狂って乗り換え提案が必要になった場合は、顧客が営業マン主体の顧客だった場合に、こちらからフォローしなくてはならない状況があります。

 

証券会社には、投資をしたいけれどよく分からないから担当者が必要だとする顧客が一定数います。

 

色々話をして買い付けに至った後に、「売買のタイミングはちゃんと教えてね」という顧客もいるわけです。

もし、回転売買を完全に禁じてしまった場合、こういう顧客は放っておかれることになってしまうことが懸念されます。

 

もちろん、顧客の注文はほぼ、どんなに短期の保有でも理由があれば売却して、その後に顧客の判断で買い付けをする資金とはして使用することは可能です。

(営業マンからの提案は不可。相談は、可。商品によっては売却可能時間に制限アリ)

 

しかし、営業マンの話を聞いてしか投資判断をしない顧客は、フォローとして商品説明を行っても、それで売買を決めた場合、上司の確認の際に、「〇〇さんのお話を聞いてそうした方が良いと思ったから」という具合に、営業マンが乗り替えの提案をして、それに応じた案件だと判断されてしまって、その注文が受けられないことになってしまうんです。

 

伝わりにくいかもしれませんが、規制の強化は自由度を削ぎ、顧客へのサービスにも直結し、顧客はそういった規制の中で営業がされていることをなかなか理解してくれないので、ルール作りは難しくなるわけです。

 

 正し、繰り返しになりますが、回転売買は証券会社の悪しき慣習であるのは間違いないと思いますし、それを止める流れは強化されるべきだとは思っています。

 

やはりどんなことでも「規制」とは難しいものだと感じます。

 

昔と今の営業

昔はこういった規制がほとんどなかったそうです。

1年に300回投資信託を乗り換えさせた証券マンもいて、業界にいた私ですら、引いてしまう回転売買は多く存在していました。

 

 それがどんどん変わってきているのは、間違いありません。

良い流れとは言えますが、遅すぎたという感覚も残りますね。

 

やはり一般的な感覚と比べれば、まだまだ足りないのが現状でしょう。

 

しかし流れができれば、後は少しずつでも進んでいくのでしょう。

営業マンとしてはやり難くなったのは事実でしたから、よくグチをいっていました。

私は過度な回転売買は反対の立場でしたので、ルールの強化は相対的に私の営業マンとしての価値を上げることになり、顧客のためにもなりますからウエルカムの考えではありました。

 

問題は、書類です。

何枚も何枚も書類を作ることになったのが、本当にしんどかったです。

 

ハンコもらいにいくのも面倒でしたし、できる仕事が書類のせいでできなくなったのは辛かったです。

 

そうなるとしわ寄せは小さな資金しか入れていない顧客に及ぶんですね。

給与を貰っている以上、やらないといけないことは変わりませんから、無くなった時間はどこかで調整をしなくてはいけません。

 

この問題も規制強化の弊害と言えるでしょうか。

 

いずれにしても、回転売買のエグさは、緩和方向にあります。

時折まだ回転売買に関わるニュースが紙面を汚しますが、規制強化の中の膿み出しの結果であると捉えることもできるでしょう。

 

 

最終的な私の意見は、結局投資家のレベルがあがれば、手数料稼ぎの売買は根絶されるということです。

 

そうした世の中になるのが、最も望ましいと考えています。

 

対面営業の顧客は、証券マンを相談の相手と考えるべきで、任せることのできる人とは思わないことです。

 

確かに証券会社が悪いのかもしれませんが、これだけ情報の取得が簡単になった世の中です。

 

証券マンに騙されたというのは、他人のせいにし過ぎだとも言えるでしょう。

ちゃんと知識をつけて、営業マンを利用している顧客もいます。

全ての顧客がそちら側の投資家になることを願っています。

 

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