投資信託の保有と売却を決める一番重要な要素|分配金は良いけど基準価額が下がっている投資信託の評価はどう考えるべきか
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最近、二人の友人からほぼ同時に同じ質問を受けました。
「分配金は良いけど基準価額が下がっている投資信託の評価はどうしたら良いか」
文言は違っていましたが、要約するとこのような質問で、つまりは、分配金には満足しているけど元本は損している場合、どう考えるべきかが分からないということでした。
両名とも証券会社(銀行)の担当者からアプローチがきっかけになっているようでしたので、そこら辺の説明も合わせて、投資信託の保有と売却を決める一番大事な要素について説明してみたいと思います。
分配金とは何か
投資信託のパフォーマンスを正確に評価するためには、分配金とは何かが正確に理解できていないといけません。
こちらで詳しく説明していますが、毎月分型の投資信託などの分配金は投資信託の純資産の一部から出ています。
丁度リンク記事のタイトル横の画像がそれを表しており、ファンドの資産の一部が分配金として支払われていることがイメージで掴めるかと思います。
従って、投資信託のパフォーマンスを評価する時は、必ず分配金を含めた(支払われた分配金を再投資した基準価額)がどのような状況になっているかを考えないといけません。
上記リンク記事では、「分配金をもらっても元本が減っていたらダメ」との論調部分があるのですが、最終的にトータルパフォーマンスが大事だと結論付けています。
なぜ、「元本が減っていたらダメ」との論調部分があるかと言うと、それだけ世間では「分配金至上主義者」が多いからですね。
さらに問題なのが、それを販売者が煽っていることです。
(これについては後述します)
いずれにせよ毎月分配型の投資信託における分配金は、銀行利子とは違い、投資信託の中身から出ている点は、詳しい方でなくても理解しておかないといけない部分です。
では、販売者が誤解をさせるような現状について説明します。
入り口と出口で違う説明
窓口で投資信託の説明を受ける時、「高利回りの分配金魅力です」と説明されることが多いと思います。
分配金利回りランキングなどもネットで人気の記事ですから、銀行金利を中心にお金を増やすことを考えてきた日本人に取っては親しみやすいキャッチコピーが「高利回り」なのでしょう。
販売している証券マンや銀行マンは、お客さんのリアクションを日々見ていますから、どのような言葉を使えば勧めたい投資信託に興味を持ってもらえるかが分かってきますし、売却を勧めたい時も同様です。
そのような背景のもと、投資信託の運用で窓口を使っていると、入り口と出口で違う説明になることがよくあります。
投資信託を買う時は「利回り」を、売る時には「元本」にフォーカスさせて、意図した売買を成立させようとするわけです。
実際に友人二人も同じように担当者から話がありました。
「元本が少しずつですが、下がっています。このままではまだ下がり続けていきます。乗り換えを検討しませんか?」
これも文言は二人で違いますし、記事にする上で若干修正していますが、このような意味合いの言葉が使われ、不安になった友人は私に相談することを決めました。
私も以前はこの「担当者」の立場でしたから、友人達にこのような説明をした意図はよく分かります。
友人達がどのような気持ちになったかについても。
今回の提案には先程挙げたトータルリターンが欠如していることが大変問題です。
今の毎月分配型投資信託の多くは、本来期待できる金利収入(ファンド内で保有している債券から計算できる利子収入)を超えて分配金を支払っているものが多いので、
円安に行かないのなら、元本は欠損する恐れが強くありました。
と言っても、率にすれば僅かでしょうし、分配金を貰うことでカバーできる可能性も高いです。
この部分は理解していれば、さほど問題ではありません。
しかし、そんな状況であるにも拘わらず、高い分配金にフォーカスさせて買わせてしまう担当者は多いですし、現状維持なら元本が僅かずつでも欠損する状態にあることを敢えて説明しません。
100歩譲ってこれを良しとしてみた場合、最低限のルールとして倫理上、販売者側が押さえておかないといけないことは、入り口(買い付け時)で「分配金」にフォーカスさせたのなら、出口(売り付け時)でも同じ説明にしないといけないと思うのです。
つまり、高い分配金を貰っていくことに主眼を置いた提案をするなら、保有時及び売り付け検討時にも主眼を移すべきではないですし、たくさんの分配金を貰っている投資家に「元本の欠損」をことさら強調して乗り換えさせるのは、間違っているはずです。
大事なことなので繰り返しますが、投資信託の分配金の源泉は投資成果です。
もっと言えば、家計のやりくりと一緒で、入ってきたお金と出ていくお金の間でやりくりしているようなものなので、収入が減っているのにも関わらず(運用成果)お小遣いを維持すれば(分配金)、どうやっても家計のお金(元本を意味する基準価額)が減るのは、構造上仕方のない問題です。
このことを勘違いすると、毎月分配型の投資信託を理解できなくなるので、今一度確認しておいてください。
分配金は、ざっくり言って基準価額から出ているのです。
これをしっかり理解できていれば、今回の友人たちに対する私の答えがはっきりしますよね。
「分配金と基準価額のトータルはどのように推移しているか」で、分配型投資信託は考えなさいということです。
ファンドレポートのどこを見ると良いか
こちらの記事で使っている図を今回も用います。
http://www.mizuhobank.co.jp/saving/fund/fund_ichiran/b08315046/pdf/m08315046.pdf
ファンドが発行するレポートには、運用成果が分かるように、上のような図が用意されているものが多くあります。
ここで私が再三説明してきたことを裏付けるように、参考にされているのは、「分配金再投資ベース」の基準価額です。
このファンドは分配金を毎月払っていますが、それを再投資したと仮定してファンドパフォーマンスを説明しようとしています。
これは、このファンドに限ったことではなく、多くのファンドで基準価額の推移とともに「分配金再投資ベース」の基準価額の推移を載せて、トータルパフォーマンスを投資家に説明しています。
従って、投資信託の保有と売却を決める一番大事な要素とは、「トータルパフォーマンスの状況」と言うことになります。
上の図の注釈に「実際の投資利回りとは違います」との記述がありますが、仮定を前提に計算されているためです。
概ねトータルの運用成果をイメージするのには、問題がないだろうと私は考えています。
このように、元本を表す基準価額と分配金は分けて考えるべきではなく、トータルでどうかを考えるのが非常に重要です。
私達投資家は、ファンドの分配金を自由に決めることができないので、ある程度ファンドのさじ加減で分配金を引き上げられたり、引き下げられたりしますから、タコ足状態の分配金は嫌だと思っても受け入れて検討するしかありません。
現状の投資行動を見ている限り、分配金が高位に保たれたファンドが今後も幅を利かすでしょうから、タコ足状態の配当をしているようなファンドは持ちたくないと思った場合は、選択肢が狭まってしまう恐れもあります。
(探せば優秀なファンドは存在しています)
現実的には、ファンドを見る目が大事になってくると思われますので、今回の友人たちが受けたような説明で混乱することのないように知識を補強しておいてほしいと思います。
ちなみに、上の図は「みずほUSハイイールドオープンAコース(為替ヘッジあり)」のファンドレポートから引用しておりますが、リンク記事で「売り時ではないか」と私が考える根拠を示しています。
http://www.mizuhobank.co.jp/saving/fund/fund_ichiran/b08315046/pdf/m08315046.pdf
こちらは同じファンドである「みずほUSハイイールドオープン」のBコース(為替ヘッジなし)ですが、比べるとトータルパフォーマンスで大きな差がついているため、為替ヘッジしているコースで持ち続けても期待が持ちにくいと感じています。
あくまで個人的な見解であり、主張とは異なりますので、投資判断は個人で行って頂くのですが、もし為替ヘッジコースを何かしらの商品で持っている場合は、上の記事を参照してみると良いかもしれません。
まとめ
今回は、友人からの相談をきっかけに「投資信託の保有と売却を決める一番大事な要素」を説明しました。
分配金は良いけど、基準価額が下がっている商品の評価をどのようにすれば良いかが分かったでしょうか。
分配金と利子の違いを完全に理解されている方からすると、今回のエントリーは既視感が強かったと思いますが、もし理解が足りないと感じた方は徹底的に勉強するべき分野だと思いますので、このブログの過去記事を読んだり、他のブログから知識を補強されると良いでしょう。
理解してしまえば、とても単純なことですので、理解できるかは心配せずに勉強を始めて見てください。
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