元証券営業マンの本音で語りたいこと

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何で1年くらいで投資信託を乗り換えさせられるの?|投信は長期保有でしょ?

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直接続いているわけではないのですが、下の記事の続編です。

 (読んでいなくても問題なく理解できます)

この記事は、二人の友人から既に保有している投資信託を乗り換えるべきかどうかの相談を受けたことをきっかけに作成した記事です。

 

この内の一人がこんな質問をしました。

「いつも1年くらいで投資信託を乗り換えさせられているんだけど、投信は長期保有した方がいいんじゃないの?」

 

今回は、この質問に3つに立場で考え、本音で答えてみたいと思います。

 

銀行マン・証券マンの立場

銀行マン・証券マンにはノルマが存在します。

銀行マンは友人に一人しかいないので、全部の銀行が同じシステムだとは、私の知識では言えませんが、証券マンの友人は多く、10社以上知っているので、ノルマが「頑張って達成しましょうね」と言うレベルのものではないと断言できます。

 

証券マンのノルマは「契約件数」とかのざっくりしたものではありません。

手数料は日割り計算されたものを毎日求められますし、投信販売額・投信純増額・募集商品販売額・新規資金導入額など、細かく設定され、何時でも見れるように管理しているところも多くあります。

 

そんな環境の中で仕事をするということは、段取りは命です。

その日暮らし的な仕事をしていて、毎日ノルマを達成することはできないですし、その日の仕事と、次の日や来週、来月の仕事も並行して行っていく必要があります。

瞬時に決断して売買が成立するお客さんばかりではありませんからね。

 

では、これをもとになぜ1年間くらいで投信を乗り換えさせるかを考えてみましょう。

 

まず、挙げられるのが「売り買いしてもらってなんぼ」の世界であって、保有していても担当者は成績が上がらない点が関係しています。

こちらの記事で投資信託の販売手数料以外に証券会社が受け取る手数料を紹介していますが、担当者の成績に加味していない証券会社は多いですし、何よりも「投信販売額」にノルマがあるため、とにかく新しいお金でなくても買ってもらうことが重要なわけです。(新規資金で買ってもらえるのが一番良いですが、もし新しいお金がダメなら乗り換えでも買ってもらいたい)

 

さらに、顧客教育の観点も触れておきます。

1年くらいで乗り換えさせることを2年ほど続けると、その顧客は「投信は1年くらいで変えるものだ」と教育できます。

最初は骨の折れる説明をくどくどと行いますが、その後は「そろそろ変える時期ね」となっていく方が圧倒的に多くなります。

儲かっていたら尚更ですね。言うとおりにやっていたら儲かるわけですから。

顧客を同一期間とかで稼働させておくと、計算ができる顧客へと担当者目線で言えば、「成長」していきます。

 

加えて、社内ルールで設定している「売買可能期間明け」で売買を提案している側面もあります。

投信は長期保有が前提となっている投資商品のため、金融庁が短期売買の提案を実質的に禁じています。

こちらで詳しく説明していますが、回転売買を規制しているのが、「社内ルール」であり、そこで「投信は買い付けから1年以内は乗り換え提案を行わない」などとルールを敷いていたりするので、その期間を過ぎてから提案をするのを繰り返していると、同じような期間で乗り換えを行っている顧客が増えるという側面もあります。

 

即ち、数多くの提案の中には担当者が「自分のこと」を考えた提案が含まれており、顧客の立場で考えない提案が一定数以上あることを、利用者は理解するべきだと言うことです。

 

次に金融庁の立場を見てみます。

 

金融庁の立場

日本の眠っているお金は1000兆円以上あり、金融庁はこのお金を動かしたい立場です。

NISAもその施策の一部ですね。

優遇処置を取りながら、何とか投資に無頓着な日本人を振り向かせたいわけです。

(誤解のありそうな表現ですが、悪い意味では言っていません)

 

しかし、初心者の投資家でも簡単に参入するためには、ルール整備がとても重要ですが、昔が昔だっただけに金融庁が求めるレベルに取引業者が達していない側面があります。

つまり、初心者がカモにされるような取引が、未だに金曜業界ではあるということです。

 

そこで、金融庁は「証券取引等監視委員会」という証券取引を監視する機関を設け、定期的にかなり厳しい検査を行っています。

通称「SEC」と呼ばれています。

 

実際に私もこの検査を受けたことがありますが、まさに刑事ドラマの取り調べのような感じで、凄みもありますし、「非合法的な売買があるはずだ」との立場で末端の証券マンもみっちり検査します。

 

その検査でよく聞かれたのは「何でこの売買を提案したの?どこにその売買の必要性があったの?」ということでした。

言う通りですね。

売買を成立させれば、その証券マンには「販売手数料」が入るわけですから、利用者を守る立場のSECは、「手数料稼ぎではないか?」と疑って検査するべきです。

その当時はとてもそんなことを思える余裕は無かったですが…。

 

しかし、お客さんの立場でここをしっかり考えると、一定の正しい答えがありそうです。

つまり、「証券マンが手数料稼ぎが目的で提案をしてきているのではないか」との見方です。

実際に金融庁の検査では、「長期保有」という言葉が何度も出ていました。

投信は、設計上、長期保有をするのが前提になっている商品ですから、1年とかの期間は「短期」に当たるため、それ相応の理由が無いと乗り換え提案自体がおかしいはずです。

 

最後に顧客の立場で最終の答えを出しましょう。

 

証券会社利用者の立場

投信は、長期保有を前提に商品選びをするべきです。

特に、債券で運用しているものは、金利を貰うのが主な目的ですから、1年でもそれは可能ですが、あまりにも短いと言わざるを得ないです。

 

確かに円安に行く時もあるでしょう。

もっと儲かりそうな通貨を選びたくなりますし、上がった投信は売って安い投信を買うのもセオリーに則った考え方のように思います。

 

しかし、その乗換に手数料が発生するのなら、投資パフォーマンスを直接悪化させる原因になりますし、個別通貨の動きを完全に捉えて売買を上手くやろうとしても、なかなかうまくいきません。

専門家でもよく外してしる現状に目を瞑るべきではないはずですね。

 

担当者の話をよく聞くと、魅力的な提案のように思うこともあると思いますが、先々を完全に予測できる人はいませんし、彼らには彼らなりの事情もあります。

何よりも、最初に長期保有するつもりで買ったのなら、余程の事情が無い限り、乗り換えを行うことは運用方針がブレているわけです。

センスに自信があって、パフォーマンスに裏付けられている力があるなら、上手く立ち回ることもできそうですが、もしそうではないなら、入り口の考えを大事にするべきかなと思います。

 

少なくても、ファンド運用は1年程度で乗り換えをしないといけないものではないと私は考えていますし、実際に儲けの出ていた人は、長期保有を貫いた人でした。

5~8%でも毎年投資成果を上げられれば御の字の世界で、乗り換えによってコストを1%~3%毎年余計に払っていては、長期で勝つのがとても難しいように思います。

当然ながら、私の友人にもこんな説明をしっかりしました。

 

まとめ

今回は3つの立場で、投信の乗り換えを考えてみました。

結果的に初級編になったので、中級編をまた改めて記事にしたいと思います。

 

しかしながら、この記事でも大切な伝えたいことは込めることができたと考えています。

投信は、入り口(=投資信託購入時)で考えをしっかりまとめて、最終的に大きな利益を取るためには、何が必要かを考えるべきです。

コストは、管理しないと、長期的に驚くほどパフォーマンスを悪化させていることに気付きます。

後悔しない投資をするために、皆が儲かっている今だからこそ、乗り換えの必要性をしっかり検証してください。

担当者が儲けさせてくれた面を否定したくないですが、実際の今の相場は、何を買っていたとしても多くの方が儲けを出しています。

 

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