飛び込み営業初日に起きた軌跡|見習い営業マンが手にした成果とは
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営業の皆さんは、自分が初めて営業活動を行った日を覚えていますか?
私は、飛び込み営業の初日に出会った軌跡を忘れることなく営業活動を行っていました。
電話外交はその前に行っていたので、実際の営業活動初日については覚えていないとする回答が正しいのですが、私に取ってのスタートは、飛び込み営業初日に起きた軌跡からです。
それまでの経緯から説明していきましょう。
飛び込み初日を迎えた経緯
金融機関なので、研修はしっかりしていました。
集合研修を経て、ある支店に配属になり、飛び込み営業初日を迎えるまでは、入社から3ヶ月ちょっとの期間があったので、十分な時間はあるように思いますが、覚えることが多い過ぎて、実務で覚えて行くというのが実際のところです。
どの会社も同じようなところがあるでしょうか。
本人としては、これで営業なんてできるのだろうかという思いでした。
支店に入ってからは、OJT(現場教育者)の先輩が付いてくれますが、その人にも当然ノルマがあるわけで、どんどん聞いてきても良いと言ってくれてもなかなか難しい面があります。
横で見て覚えていこうと必死でしたね。
夕方になると、副支店長の手が空くので、新人を集めて営業のロールプレイングをして色々教わりました。
と言っても飛び込み営業初日まで1週間でしたが…。
ロールプレイングで基本的なパターンの営業方法を習います。
集合研修でも勉強していたのですが、人との会話ってパターン化するのに限界がありますし、自分のパターンに持ち込むのにもテクにニックがいるわけです。
ロールプレイングは上手くなっていきましたが、営業力がついている感じは皆無で、結局実践のなかで覚えていくのだなと思ったものでした。
そんな中で、支店配属から5日経った頃、OJTの機嫌が悪い日を突然迎えます。
私=A、OJT=B
B「おまえ、ずっと電話しているけど、外にはいかないのか!}
A「え! 電話外交やってるように言われたので…」
B「おまえ、自分から言ってこいっていつも言っているだろ!」
A「すみません。どうしたらいいですか?」
B「来週から飛び込み行け」
A「わかりました。やり方は教えてもらえますか?」
「今日の夕方教えてやるよ」
こんな会話で何の前触れもなく、私の飛び込み営業デビューの日が決まりました。
ただ、正直電話をかけ続けることも飽きていたのもあったので、外に出ることをワクワクした気持ちで受け止めた記憶があります。
支店の雰囲気が悪い時に、どう気持ちを持っていったら良いのかをまだ知らなかったので、ここに居たくないという思いもあったのでしょうね。
そんな経緯で、飛び込み営業初日は支店配属から1週間後の朝からと決まります。
初日の知識量
知っていると本人がこの時点で思っていたことは
- 案内する目的の商品1つ
- 飛び込みで入っていく時の方法
- 会話パターン5つくらいで金融的な世間話から見込み客にする方法
当時の私を今の私から評価すれば、何も知らないことと一緒でした。
口座開設の方法すらうろ覚えなんですから話にならない見習い営業マンです。
しかし、ひとつだけポイントがありました。
この商品で話をしてこいと言われた商品を、私は勉強しまくって惚れ込んでいたのです。
これは素晴らしい商品だと思っていたことは、今でもよく覚えています。
何の相対比較もしていないのに、そこまで思えたのは若気の至りですね。
完全に間違った考え方ですが、当時のセンスは悪くなかったです。
その商品の属するカテゴリーは、今でも私の中では有効な投資対象と思っている一つです。
そのカテゴリーについては、また記事を改めて紹介します。
話が少し逸れましたが、初日の知識量で勝負できるポイントは、とにかく勢いで会話をして知り合い状態になること(見込み客を作る)、それ以外にはなかった感じです。
飛び込み初日の状況
土日の休みで準備をしようかと思ったのですが、配属されて初めての休みだったので同期で集まったり、彼女と遊んだりしていたら、まとまった時間が取れないままに飛び込み営業初日を迎えることになってしまいました。
朝9時に日本株相場が始まると、支店の空気が変わっていくので、なんだかんだと飛び込みにいくのに現実的な恐怖を覚えていた私の重い腰も上がります。
営業は色々な資料を持ち歩いて、どんなニーズにも対応可能なように用意をしますが、その時の私は、話ができる商品が1つだけの状態。
9時に始めた用意を終えたのは9時10分です。
念のためと口座開設キットを探すのにかかった時間だけでした。
それではでかけようとOJTにその旨を伝えると、どこにいくかを聞かれました。
私としたことが、週末に副支店長と一緒に決めた地域の報告を忘れていたのですね。
少しだけ怒られましたが、OJTの機嫌がその日は良かったようで、丁寧に出かける時のルールを教えてくれました。
そういう時間を過ごしながら、私の気持ちは少しずつ盛り上がっていき、電車で1駅の飛び込み地域に足を運びます。
理想と現実
私が選んだ地域は、大きな駅の小さな商店街。
一生懸命やればどうにかなるだろうと前向きな気持ちで飛び込みを始めようとしますが、足が進んでいきません。
たばこを吸って一息ついたら行こうと決めて、3本目に火をつけたところで我に返ります。
これではこのままサボって終わってしまう…。
その3本目を吸いながら覚悟を決めて一歩目を前に進めました。
忘れもしない1件目の飛び込み。
それは客のいない、やっているかもよくわかないパン屋さんです。
「〇〇証券の新人の〇〇と申します。本日はこの地域を担当することになったご挨拶で商店街を回らせて頂いております!!」
気合を入れて元気ハツラツな新人あることをでアピールしました。
「…」
反応がありませんでした。
こんなパターンはロールプレイングで教わっていませんから私も黙ってしまいます。
実際には、1分くらいの沈黙だったのかもしれませんが、私の中では5分くらいに感じたその時間で決定した私の行動は…
逃げることでした。
無理です。
飛び込みの最初から、予期しない対応をされて、驚くばかりで解決策は浮かびません。
だって、いつもより大きな声で、さらに自分のMAX笑顔で話かけたんですよ。
それで反応が無いなんて経験したことがありません。
そのことがとても恥ずかしくて、今から思えばよく逃げれたなと思うくらいです。
その店を出て、もう一度たばこを吸ったところに戻って、自分に何が起きたのかを考えました。
話しかけても無視されることがあるのだと理解するのに少しだけ時間がかかりましたが、理想と現実がよく違うことは知っていました。
今度は2本目にも火をつけることなく、2軒目の飛び込みを始めることが出来ました。
少し成長ですね。
そこからは、無視されても名刺を置いたり、断られても挨拶だけはしてみたり、少しテンションが上がってきて良い感じで回り始めます。
飛び込み営業って普段の生活と比べると異常な行動なので、スイッチが入ると自分がピエロみたいに思えて調子に乗れるという特徴があります。
もちろん当時の私はそれを知りませんでしたが、自分が調子に乗れている感じはありましたね。
しかしです。
30件も回ったところでその効果がなくなり現実に戻ります。
30件ほどの飛び込みで実際に街の人と話が出来た時間は合計しても5分くらい。
全部一言で終わってしまうので、会話はできませんでした。
冷静に考えれば、当然なんです。
こちらから飛び込んでいるのに、話を広げようとしないのは私の方でしたから。
恐かったんですね。
証券のことを何も知らないことがバレるのが。
自信がない営業マンほど客を口説けない状態はありません。
テンションで無理やり足を運んでいましたが、飛び込みをしているってだけで満足し、見込み客を作るとか、ちょっとでも話をしてみようとする気持ちはとても小さかったと思います。
飛び込みしろって言われて飛び込みしている自分が凄いとさえ思っている始末なので、学生気分全開です。
「もう今日はしょうがないから件数だけちゃんとやって、また明日頑張りますって言えばいいや」と半ば諦めて飛び込みの趣旨を勝手に変更しちゃいます。
理想と現実を知ったとまで行ってしまうと当時の私には大げさですが、コミュニケーションの力に自信があった私は、営業の難しさを痛感したのは覚えています。
最後に出会った軌跡
50件くらいは回ろうと決めて、そこからは少し遊びました。
最初の挨拶を変えてみたり、テンションを変えたりして、反応だけを気にして回っていきます。
違いを感じる程営業力はありませんから、恐らく気分転換のつもりだったのでしょう。
それが軌跡を呼ぶことになりました。
あるお店に入ったところ、何屋さんかわからないお店に飛び込んでしましました。
奥に女の人がいたので、思わず「ここは何屋さんですか?」と聞いてしまいます。
見た目70代くらいの女の人でしたが、客とも業者ともわからない私にお店の歴史を話し始めたんです。
教えてくれたのは、このお店が100年程続く呉服屋さんだったこと。
市から呉服関係の賞を何度か受賞していること。
旦那さんが亡くなってしまってから営業はほとんど止めて、馴染みのために空けていること。
そして最後に私が誰なのか気になっていることを教えてくれました。
最後の情報が出てくるまで1時間ほどかかったと思います。
とにかく人と長く話をしてこいと言われていた私は、満足感の中でその話を聞いていたので、いざ自分が誰なのかを聞かれて大変驚いたことを覚えています。
私=A、女の人=B
A「実は〇〇証券の〇〇という者でして、地域担当のご挨拶で回らせて頂いているんです」
B「あら、そうだったの。そういう人はキリがないから話はしないことにしてたのに」
A「すみません。入った瞬間自宅に飛び込んでしまったのかと焦ってしまいまして」
B「先に言ってくれたらこんなに話なんてしなかったのに、悪いわね」
A「いえ、実は今日ずっとここを回っていたんですが、誰も話は聞いてくれないし、名刺も受け取って頂けなくてどうしようかと思っていたんです。」
A「話をして頂けただけですごく嬉しいです。本当にありがとうございました」
疲れていたので、素直な気持ちが口を突きました。
話をしていて涙が出そうでした。
それくらい気持ちの部分では張りつめていたんでしょうね。
普通の神経では飛び込みは難しいです。
女の人の話をよく聞くと、結局私とは話をしたくなかったという内容の言葉だったので、時間を取らせたのは私の方です。
私には、誰でもいいから話をしたいという目的がありました。
話を始めてくれたことをいいことに、その話が続くように私が努力した部分もありましたので、突然に申し訳ない気持ちになってきて謝って帰ろうと決断します。
実は帰社予定を大きく越えてしまっていたんです。
1時間も話せるとは思っていなかったので、完全に予定が狂っていました。
これ以上長居すると、怒られるかもしれないという気持ちもありました。
A「本当に申し訳ありませんでした」
B「もういいわよ。感じの良い人だなと思ったから話をしたんだし。」
B「それでもこれだけ話をしていて、会社に怒られないの?」
A「今日が初日なんで、話ができただけでたぶん褒めてもらえると思います」
「誰とも話ができなかった方がまずかったので」
B「あなた今日初日なの?じゃぁ新人さん?」
ここで気が付きました。
私は新人であると言ってから挨拶しないといけないと言われていたのに、初めの言葉が長くなるのが嫌で端折ってしまっていたのです。
A「そうなんです。初日でこれだけ話をしてくれる人と出会えたんで感動していました」
B「あなた気にいったから、何か買ってあげるわよ」
A「????????」
理解できませんでしたね。
何の話もしないのに買うとか、「かう」って何か他の意味があったかと本気で考えていました。
リアクションが取れない私を見てその女性は続けます。
B「何か持って歩いてんでしょ。新人だからって仕事なんだからちゃんとやらないとだめよ」
A「はい。商品持っているんでお話ししてもいいですか?」
B「だからそれを買うっていってるでしょうが」
「私で練習して、いっぱい売りなさいよ」
A「これなんですけど、上手く説明できるかわからないので良く聞いて頂いて、分からないところを教えて下さい」
そう言って30分程説明をしました。
皆さん、覚えていますか。
私は既に帰社予定を大幅にオーバーしていたことを…。
話し途中で携帯がブルったのをきっかけに思い出しました。
副支店長が怒っています。
「おまえ帰社時間には帰ってこいっていっただろ。何してんだ!!」
完全に調子に乗っていました。
チャンスだと思って計算したわけではなかったので、その言葉は私の芯に響きました。
「すみません。商品買ってくれるっていう人がいて、話をしていました」
副支店長から素っ頓狂な声が聞こえています。
「おまえ、今なんて言った?絶対儲かるとか言ったんだろ。騙してまで取ってこいなんて俺はいってねーぞ」
怒っているようにも聞こえましたし、驚いているようにも聞こえて、どうして良いのかわからず、とにかく誤解だけは解こうと、お客さんが目の前ですが、正直に経緯を説明しました。
私が目の前にしているのは、私が何を紹介しても買ってあげると言っている人だと副支店長が理解するのに時間はかかりませんでしたが、副支店長は私を管理する責任があります。
「そこの場所を教えろ。商店街の何件目くらいだ?俺がこれから言ってよく話をするからそれまで話を繋いどけ。」
この時の副支店長の話を私は今でも忘れられません。
悔しかったんですね。
こんなにいい人と出会えて、私で練習しろとまで言ってくれる人を他の営業マンに取られるみたいで。
それでも私には口座開設の知識さえ曖昧で、商品のリスクを理解してもらうほどの説明力もありませんでしたから、おかしな話なのですが、本当に悔しい気持ちになりました。
しかし私はその気持ちをグッと飲み込み、場所を教えて、お客さんにも副支店長がくる旨を説明しました。
すごく嫌がりましたが、今の私はまだ勉強の途中で、リスク商品を買うのに専門家の話を聞いてほしいと伝えると、何とかご納得頂いて、副支店長がくるのを世間話も交えながら一緒に待ちます。
ほどなくして副支店長が現れると、すいすいと話はまとまり、私の持っていた商品を100万円買い付けて下さることが決まりました。
ものすごく嬉しかったのですが、そのお客さんの言葉がもっと嬉しかったんです。
「すごく頑張っていたから応援したくなったの」
「私がいい人だと思った人は間違いないから、副支店長さんも応援してあげてね。きっとすごい営業マンになるわよ」
帰り際には涙が我慢できなくて、どうしようもなかったです。
配属から1週間、ほとんど成果はなかったので、それは当たり前のことなのですが、それなりに悩んでいたものがふっと無くなって、感動は凄まじかったです。
結局、その約定は社内の飛び込み案件では新人一番乗りで、本部からの電話取材なんかもあって社内報で紹介され、その後の私を大きく変えていきました。
あれが無ければ、また違った営業マンになっていたでしょう。
私の飛び込み営業初日に起きた軌跡は、100万円の投資信託の買い付けですが、その数十倍の価値のあるものでした。
その後も本当によくしてもらって、直接的ではなくても私を成長させてくれたお客さんの一人です。
こういった出会いが定期的にあって、続けることができたと思います。
それでも、そんなお客さんさえ裏切るような環境があったことは辞める原因になったことですので、複雑な思いも同時にあります。
顧客のための営業ができれば、感動も多い業界だとも思っていることが伝わればと思います。
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