証券会社の入社3年目くらいから求められること|決まっていないのに数字を出す?
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証券会社に入社してリテール営業に配属されると、まず新規開拓を行います。
一番多い配属が、一般的な個人の方を主に相手にする営業の仕事に就くことです。
個人と言っても、会社の口座も含みますし、社長さんが会社の口座を開くことがあったり、経理部長あたりと仕事することは珍しくありません。
新規開拓をしながら、色々な知識と経験を積んで、一人前の証券マンになるのですが、入社3年目くらいからはベテランと同じように一人の営業マンとして責任ある仕事が求められるようになります。
その一つが募集商品の数字の出し方です。
今回は、証券界特有の数字(営業成績)の出し方と証券会社の入社3年目くらいから求められることについて説明したいと思います。
証券マンは取れてなくても数字を出しておく
証券会社の募集する商品にはノルマが各自に与えられます。
それは「頑張って達成しましょうね」という甘いものではなく、特に債券類などは先に仕入れ(厳密には引き受け)があるので、達成できない数字は必ず他の誰かが穴を埋めます。
支店規模で出遅れれば、支店を越えてでも達成しようとするのが「募集商品のノルマ」であり、もし自分のノルマが追い付いていかない時は経過率(ノルマに対しての進捗率)の遅れでも詰められるので地獄を見ます。
と言うことは、グロスでどうなるかは当然大事ですが、ノルマ達成日までの進捗の具合もとても重要になるわけです。
そこで、証券マンは数字を先に出してしまうという行動が求められることがあります。
例えば、日頃のアプローチから得た情報から、500万の買い付けを見込んでいる顧客がいるとします。
「今日、連絡が取れれば、予約と言った形で返事が貰えるはず、でも夜になっても連絡がつかなかった」
その時は、経過率が他の営業マンと比べて悪い時などは、先に数字を出すという行動を取ります。
返事がまだですし、提案さえもまだなのですが、取れると分かっている玉が、たまたまその日に連絡が取れなかっただけで詰められるのは割に合わないことから、そういった形を取るんです。
しかし、これはまだ良い数字の出し方です。
取れる見込みがあるのですからね。
本当にヤバイのは、取れる見込みが具体的でないのに数字を出さないといけない時です。
数字を出せば、他の誰かがやってくれることはありません。
完全に自己の責任でやりきらないといけなくなります。
「なぜ数字が取れていないのに出せるか」と言う問題ですが、それは総量の配分をする時(どの客がどれだけ買うか)と、実際に注文を流す時にタイムラグがあるからです。
販売できる玉の総量が決まっているので、支店内で予約をしておき、実際に買い付けが可能な期間に買い付けることになるんですね。
従って、ノルマをやりきることは大事ですが、経過率も気にしなければならないですし、どのように数字を出していくかが難しいバランスの中で問題になります。
なぜ取れていない数字を出させるのか
先程も触れていますが、取れていない数字を出すことができる理由は、支店の中で募集が始まってお客さんと話しがまとまってから、本当の買い付けにあたる約定を迎えるまでにタイムラグがあるからです。
例えば、外債の募集の場合、仮条件などを書いてあるパンフレットを先に送ったりして提案するのですが、話がまとまって買い付けする際には目論見書を交付し、説明した上で買い付けてもらわないといけません。
毎回、提案時に目論見書を送っていては、送料もかかりますし、目論見書の数も足らないので、パンフレットを使います。
そうなると、話しがまとまってから、
目論見書を送付→到着確認→説明→買付注文受注
と言う流れになるので、時間が相当にかかるのです。
訪問によって目論見書を交付説明する場合もありますが、アポがいつになるかが微妙だったりするので、いずれにしても時間を要することになるのです。
この制度は、逆に言えば、話しがまとまっているのかどうかが曖昧でも予約の数字を出せることを意味しています。
この制度を、今度は逆に考えてみましょう。
数字を出すのは、その営業マンのさじ加減とも取れますよね。
それを知っている上司は部下に圧力をかけることで数字を出させようとすることが想像できますか?
募集商品によっては、各営業マンでやりたくないものあれば、やりたくてもできないものも出てきます。
フリーハンドに募集させて、数字を出さない営業マンを放っておけば、支店の数字が進んでいかないわけです。
募集商品が来ると、大凡の募集イメージを支店で共有しているので、細かな経過率と支店内募集期間が告げられます。
経過率を最初に合わせる日が募集開始から3~5日くらいで、その時々に寄りますが30%~40%くらいの経過率を求められます。
3000万円の募集ノルマなら、約1000万はその日までにやりきってくださいねと言う具合です。
しかし、先程触れたように実際に取れた数字を入力して約定させるのはまだまだ先なので、上司は部下に対し、数字を出すように仕向けます。
「おまえ1000万くらいは先に出せるよな?」
という感じに。
ノルマ3000に対して1000が出せないとなれば大問題ですからね。
「はい」としか言いようがありません。
もし、「無理です」となれば別室行きでしょう。
その時点でノルマの30%できそうもない状況だと報告していることと同じ意味ですから。
しっかり話を聞いとかないと課としてのノルマが厳しくなりますし、しっかり詰めておかないとしわ寄せが自分に来ると、上司は考えます。
自分が上司でも同じ行動を取るでしょう。
証券会社の入社3年目くらいから数字の責任が重くなる
はっきりと3年目から重くなりますよとは言えません。
2年目からかもしれませんし、2年目の後半からかもしれません。
細かなところは営業マン毎、上司の考え方毎に変わるのですが、少なくとも3年目からは圧力が変わってきます。
それまでは課の数字のフリーハンド部分でノルマが課せられるようなイメージです。
例えば、課全体でノルマが2億だったとしましょう。
課長4500万、中堅3000万×3、若手1500万×3、新人(扱い)500万×4で割り振るとします。
最後の部分の、新人(扱い)500万×4=2000万が、要するに課全体でフォローしろというイメージです。
努力目標までは軽くないですが、できないことを織り込んで、ノルマプラスアルファーを課全員が意識する感じでフォロー体制を作ります。
それが3年目くらいからは、上の振り分けの「若手」に含まれて扱われるようになります。
新人(扱い)と書いたところは、入社1~2年目くらいですね。
一気に扱いが変わることもありますし、徐々に変わることもありますが、分岐点を迎えるのが3年目くらいの時かと思います。
方針にも似たこの扱いの変わり方は、募集以外の業務全てに当てはまります。
月間手数料や投信販売、投信純増などなど全てです。
支店として、数字構築の戦闘員とは見なかった新人時代を抜けて、求める数字をやりきる戦闘員として頭数に入れられてしまうのがこの頃です。
数字に完全な責任が生まれます。
それまではお客さんも少ないですし、新規開拓が主な業務ですから、支店ノルマは軽めですし、指導のされ方も違うのですが、2年目の後半から3年目の前半にかけて、いずれにしても「若手」枠に入り、中堅とは差があるものの、課せられる責任が出てきます。
数字も、それまでは取れた数字を出せばよかったですが、経過率まで見られるようになっていきますので、取れていない数字も出さないといけない場面にブチ当たるでしょう。
仕事のやり方が根本的に変わってきます。
営業マンが信頼を得ると、商品なんてどれでも良い玉(お客さんからしたら投資資金)ができます。
証券営業を行っていく際は、この振り分けもまた技術であり、如何に自分が振る分けることのできる玉を常に一定レベル確保するのかが意外と重要です。
この話は、完全に営業マンベースで展開しているので、かなりブラックな話に移るかもしれませんが、現実的にはより良い商品提案に繋がることも多く、やり方次第だと言えますが、本当に困った時にその投資家に合わないであろう商品提案をすることは起こり得ます。
現実的には、出来ない営業マンほどその機会が多く、顧客に喜ばれない営業が、自らの首を絞めていくのですが、ノルマ未達成のプレッシャーが選択肢を無くしていく感じです。
そうならないように、色々なニーズの顧客の信用を得ておく必要がありますし、パイが小さければ文字通り食いつぶして終わりを迎えることになります。
このように、証券会社の入社3年目くらいから、求められることが変わっていき、ノルマに対する取り組み方も変化を求められます。
私の場合は、それが見えた時点から準備を始めましたので、上手く対応できましたが、準備するまでの余裕がない営業マンは辞めていくきっかけとなりました。
先を見据えて仕事することが生き残る秘訣と言えるでしょうか。
しかしながらここで何度か説明しているように、証券営業はステージが変わってもなかなか逆転が起らず、成績上位者は求められる仕事の内容に変化があっても成績上位を保ちます。
従って、ビビる必要はないですし、営業成績を上げる努力を続けて、しっかり結果を出せていれば問題ないです。
準備の必要性や方法論も、営業成績の上位を維持できる人は自分で考えることができるはずです。
この記事で、そのイメージがより具体的になれば良いかなと思います。
まとめ
今回は、証券会社の入社3年目くらいから求められることを中心に、決まっていない数字を出す仕組みと理由を説明しました。
業界にいない人には分かり辛かったかもしれませんね。
かなり独特な世界に証券営業があるのかなと、改めて思います。
他の営業職の人と話しても、共通する部分がある一方で、同じ営業でもここまで違うものかと、落胆に似た感情を抱くことがありました。
求められることが変わると、また差が開き、仕事は楽になっていくことが無いので、しんどい思いをするかもしれません。
先々を見据えて、追い込まれる前に行動することが、経験上最も大切なことだと思います。
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