投資信託の為替ヘッジありコースとなしコースのパフォーマンス差|売り時か?純資産残高の動きにも違いが
スポンサードリンク
一時期流行った投資信託の「為替ヘッジありコース」ですが、純資産が大きく変動しているものが出てきています。
投資信託の中でも安心・安全を求めて、為替ヘッジしているものを買った投資家が動き出しているので、自分のポートフォリオも見直す必要があるのかを検討した方が良さそうです。
今回は、みずほ銀行でも販売している、みずほUSハイイールドオープンAコース(為替ヘッジあり)とみずほUSハイイールドオープンBコース(為替ヘッジなし)を例に取って、投信の為替ヘッジありコースは旬を過ぎたのか考えてみようと思います。
パフォーマンスに違いが出ており、売り時を考える必要性を感じている投資家が増え、それを裏付けるような純資産の動きが出ていますので確認しておいてください。
残高の推移に大きな変化が
為替ヘッジありコースは、一時期人気になった投資信託の運用方法です。
通常、外国債券に投資をする投資信託は主に為替リスクが値動きに影響しますが、為替ヘッジをしていると、為替の動きが及ぼす影響をかなり軽減できます。
上の二つの記事で取り上げているので、もし基礎的な知識が無い方は、読んでみて下さい。
現在のイメージを持って頂くために、先に各コースの残高の推移を確認してください。
http://www.mizuhobank.co.jp/saving/fund/fund_ichiran/b08315046/pdf/m08315046.pdf
上からみずほUSハイイールドオープンAコース(為替ヘッジあり)、次にみずほUSハイイールドオープンBコース(為替ヘッジなし)の順に2015年1月30日現在の運用報告書から運用実績の部分を載せています。
色の塗っている部分が純資産残高の推移なのですが、為替ヘッジありコースの方は右肩下がりに残高が減っています。
青い線が所謂運用成果を表すチャートなのですが、こちらはほぼ横ばい、若干右肩あがりの状態ですから、運用成果が悪いから純資産残高が減ったのではなく、保有していた投資家が売っているから減っているのだと分かります。
方や舌の図に移ってヘッジなしコースの方は、ピークからの減り具合は似たような割合ではあるものの、直近の純資産はほぼ横ばいです。
運用成果は右肩上がりに上昇していってますね。
赤い線が元本の推移を表している基準価額の動きです。
こちらを比べてみると、「ヘッジあり」は緩やかな右肩下がりで、「ヘッジなし」は同じく緩やかですが右肩上がりと表現できる推移をしています。
この動きをみていると、どうやら運用成果の差が純資産の動きに関係していそうです。
詳しく見てみます。
運用パフォーマンスに大きな差が
http://www.mizuhobank.co.jp/saving/fund/fund_ichiran/b08315046/pdf/m08315046.pdf
同じ順番で期間別騰落率を載せました。(上が為替ヘッジあり。下が為替ヘッジなし)
比べてみると、1年間で為替ヘッジありコースが約1.7%しか運用成果が出ていないのに対し、為替ヘッジなしコースは約17.0%の運用成果が出ています。
倍率で考えるべきではありませんが、それにしても10倍の差が付くというのはなかなか驚きではないでしょうか。
また、各期間でパフォーマンスを比べてみると、直近1ヶ月の部分以外で、全て為替ヘッジなしコースが優秀な成績を収めています。
ベンチマーク(ファンドが設定しているモノサシ。日本株投信で言えば日経平均やTOPIXに該当するもの)同士を比べても直近1ヶ月意外の部分では全て為替ヘッジなしコースが優秀な動きをしています。
為替ヘッジありコースの投資信託を保有している人は、この数字をよく見ておきましょう。
ベンチマークに差があるということは、運用方針の違いでパフォーマンスに違いが出ていることを表します。
例えば、株式投信なら、日経平均とNYダウのようなイメージです。
今回のテーマで違う点は、為替ヘッジの有無であって、市場が違うわけではないという点は大きいです。
要するに、為替ヘッジが本当に必要かどうかを問う事態になってきているかもしれないということです。
以前の為替ヘッジに対する考え方
リーマンショックが起こるまで、為替ヘッジをしている投信は、あまり人気にはなりませんでした。
長期的に円安に向かっていた背景があり、ヘッジよりも分散によってリスクヘッジしようとするのが一般的でした。
しかしその後のリーマンショックで、不安感を露わにしながらもなんとか損したお金を取り戻したい投資家層に「為替ヘッジありコース」が人気となり、残高を伸ばします。
為替ヘッジは、コストがかかります。
詳しくは先程張ったリンク記事(毎月分配の投資信託にある為替ヘッジコースってどんなもの? )で説明しているのですが、金利が世界中で低下したことで為替ヘッジにかかるコストが減り、地合いにあった商品の一つとなりました。
しかし、それまでは金利が高かったため、為替ヘッジコースはとてもお勧めするような商品ではありませんでした。
高い金利を貰いたくて外国債券型の投資信託をかったりするのに、為替ヘッジしてコストを支払っていると、リスクしか残らない形となってしまうことが懸念されたのです。
計算が合わなくて、為替ヘッジコース自体の設定が少なかったのも特徴的でした。
確かに為替リスクを無くして高金利が取れるなら、それに越したことはないと考える投資家層は相当の数います。
円安に行くか、円高にいくかは、専門家でも外すようなものですし、安心確実な商品があれば、「いいな」と思う人は多いはずですよね。
でも、実際には為替ヘッジすることでデメリットもあるわけですので、地合いをしっかり見極めることが大切になってきます。
今後の見通し
今、アメリカの市場は過去最高値を更新しながら推移ししています。
経済指標の裏付けがある中で株価の上昇が起こっている状況なので、健全な価格形成が為されていると表現できそうです。
適切な価格なのかについては、言及を控えますが、経済状況が良好だと言えるでしょう。
当然ながらそれは、アメリカの政策金利にも影響してきます。
現在の先物市場が織り込んでいる利上げ幅は0.5%ほどだと言われていますが、2015年7~9月くらいの時期に金利の引き上げに踏み切るのではないかとの見通しを公表している専門家が増えてきていますね。
夏には利上げのニュースが舞い込みそうです。
そうなると、やはり投信の為替ヘッジありコースにも影響がありそうです。
先程、為替ヘッジのコストについて触れていますが、金利の上昇が起きればコストは増えていくことになります。
現在のパフォーマンスが決して良いとは言えない状況ですから、金利収入が増えるとは言え、厳しいですね。
また、アメリカの金利があがるなら、セオリーから判断すると、円安方向へ為替が流れる可能性が増すことになります。
金利が低い国から高い国へお金の流れができますので、円安への追い風になるでしょう。
金利収入が増えつつ、為替益までついてくる状況になれば、外国債券で運用する投資家に取っては良い環境です。
しかしながら、現在もその見通しありきで価格形成が進んでいますから、見通し通り進んでいって、更にそこから良いニュースが出てくる、所謂好循環に入ることを前提にしていますので、必ずもうかる意味ではないことにご留意ください。
あくまで、市場はあらゆる材料を織り込みにいきます。
従って、「何事も起こらず、このままの経済成長が続く場合」は、為替ヘッジありコースに取って、更に売り込まれる状況にある可能性が高いです。
ヘッジをしていれば、為替益はほぼ無くなりますし、金利も低くなってしまいますので、先程挙げたパフォーマンス差に気付く人が順々に現れることになるでしょう。
為替ヘッジをしている投資信託を持っている人は、売り時に対し一考の価値があるのかもしれません。
個人的には、ヘッジありの時代がまた去ったのかなと考えています。
まとめ
今回は投資信託の為替ヘッジありコースとなしコースのパフォーマンス差を中心に、売り時かどうかの見通しについても触れました。
私個人の考えを述べているに過ぎませんので、投資判断には活用せず、ご自身で色々調べてご判断下さい。
きっかけをご提供できたなら良かったかなと思います。
いずれにせよ、投信は基本的に長く持つものですから、地合いに合ったものを持つよりも長く持てるものを選ぶと良いです。
初心者なら尚更ですね。
その意味でも、為替ヘッジコースは時と場合を選ぶものかなというイメージは持っています。
ランキングはこちら