毎月分配の投資信託にある為替ヘッジコースってどんなもの?
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毎月分配の投資信託を見ていると、時折「為替ヘッジコース」が用意されていることがあります。
何となく、為替のリスクを減らしてくれるコースなのかなとは、直感的に分かりますが、正しく理解しようとするとなかなか難しいものです。
今回は、毎月分配の投資信託にある為替ヘッジコースの意味を初心者の方でも分かり易く説明しようと思います。
為替ヘッジとは
外国の金利が高いことは魅力で、毎月分配している投資信託でも多くのものが、外国の債券で運用しています。
高利回りを期待できますので、分配金を貰いながら比較的安定的な運用が期待されますが、主な問題点は、為替が円高に行ってしまった場合に為替損をして損失を被ることです。
このリスクを軽減するために存在しているのが「為替ヘッジ」です。
為替ヘッジは、主に為替予約という方法で行われるのが一般的です。
外貨建て資産を保有すると、同時的にその資産を売却する時等、外貨にした資金を自国通貨に戻す将来の為替レートを決定してしまうのが、為替予約です。
為替予約の仕組み
外国債券型の投資信託を例に仕組みを説明していきましょう。
外国債券で運用する投資信託は、為替面だけを考えると、円を売ってドルやユーロ等の外国通貨を買っていることになります。
為替ヘッジを行う投資信託は、この為替取引で生じる為替リスクを抑えるために、将来のある期日を基準にして外貨から円に換える為替レートを現時点の為替レートを参考にして予約してしまいます。
為替予約と呼ばれていますが、実際は、将来の売買取引に当たります。
例えば、米国債で運用する投資信託があったとしましょう。
そのファンド内では、100万円分の米国債を買うのに、100万円分の円を売って、100万円分のドルを買う取引をして実際の米国債を買い付けます。
為替ヘッジを行う場合は、その時点で将来ドルから円に換える決済レートを銀行などを相手にして為替予約することで、為替損をすることを防いでしまいます。
そうすると為替予約によって、実質的に円で外国債券を買っている状況を作り出せます。
為替損の可能性を実質的に排除して、外国の高金利等を享受しようとするのが為替ヘッジの目的です。
これだけを見ると、安定的に運用したい投資家には何だかものすごく良い運用方法にように感じますね。
しかし、問題もあります。
次は、その問題点について説明しましょう。
為替ヘッジにかかるコストとは
為替ヘッジを行うことで問題となるのが、コスト面の影響です。
日本は金利の低い国ですが、外国の中には金利の高い国が存在しています。
金利の低い国の通貨を持っていた場合にその国でもらえるはずの金利収入と、金利の高い国の通貨を持っていた場合にもらえるはずの金利収入には開きがあり、為替ヘッジのような先々に決済する為替取引を無条件で行えれば、決済までの期待金利収入の差に不公平が生じてしまいます。
数十億円等の大きな資金は、数日の金利もバカになりませんから、短期金利をしっかり貰えるようにシビアな資金管理が機関投資家等には求められるので、期待金利差の不公平は、多額の資金を考えると、大きいわけですね。
その不公平を取り除くために、その為替予約によって生じる金利差を支払うのがルールの一部になっています。
数日の金利でも敏感に運用している機関投資家に取っては当たり前の感覚です。
さらに、為替予約にかかる諸経費も上乗せされます。
これが為替ヘッジにかかるコストです。
つまり、為替ヘッジする外国通貨の金利が日本の金利に比べて、高ければ高いほどコストが増していくことになります。
しかし、これをそのまま考えると、非常におかしなことが起きていることに気付きます。
外国の債券で運用する効果は、高金利でしたね。
それを為替ヘッジして受け取ろうとすると、金利差の分だけコストがかかってくるので、全て相殺されて無意味な取引になってしまいます。
それでは、為替ヘッジの意味は全くなくなってしまいます。
実際に為替ヘッジをする投資信託が存在している理由は、このコストよりファンドが得る予定の金利収入が期待できるからです。
その理由は、為替予約に採用される金利差の計算が、短期金利を参考に決まっているからです。
イメージで考えてみましょう。
2014年10月29日の日本の短期金利は、約0.08%でした。
アメリカの短期金利は約0.15%です。
この日の為替予約にかかる金利差は約0.07%ですね。
それに対して、この日の米国債(10年)は、約2.38%でした。
この二つを勘案すると、為替ヘッジをしながら米国債で運用する投資信託は、2.31%の金利収入を得ながら、為替ヘッジができることになります。
(金利差以外の計算を排除し、単純化しています)
(通常、為替予約では金利差の他に諸経費もコストとして支払います)
(金利は、各1カ月LIBORをグルームバーグより参照)
債券型の投資信託では、為替ヘッジでコストが発生するものの、それ以上の金利等の収入が期待出来る場合に設定される場合がほとんどと言うことになります。
景気縮小局面ではコスト高へ
上の計算で、投資先の短期金利と長期金利の差が大きければ、為替損回避のための為替ヘッジが有効に機能することが分かるかとかと思います。
日本の金利はこれ以上下がらないところまでほぼ落ち切っていますので、為替予約にかかるコストの大きな部分は投資先の長短の金利差ということになります。
この長短金利差が小さくなる局面が、景気の縮小局面です。
景気がピークを迎えて下降に転じ始める時が、最も長短の金利差は縮小すると考えられています。
為替ヘッジがある投資信託で運用する際は、ヘッジコストが大きくなる局面では、運用を続けるかどうかの判断を再度行う必要があるでしょう。
為替ヘッジコースを選ぶ際は、コストがどの程度かかっていくのかの見通しをどのように持つのかが重要ということになります。
その考え方については、日本の短期金利と為替ヘッジ相手国の短期金利の差、プラスヘッジ相手国の長短金利差を参考にしましょう。
為替ヘッジコースを選択することで、必ず安定するという考え方は、少し誤りがあるので、難しい制度かもしれませんが、しっかり勉強して知識を付けるべきでしょう。
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